温度測定方法の種類と正確さを比較|熱電対・測温抵抗体・放射温度計・サーミスタ・はんだごて方式
工場や研究開発の現場では、測定する温度範囲・環境・要求精度によって、最適な温度測定方法が異なります。本記事では、代表的な5つの温度測定方法を比較し、「どれが一番正確なのか」を解説します。
1. 熱電対(Thermocouple)
熱電対は、異なる2種類の金属線を接合して閉回路を作り、その接合点に生じる熱起電力(ゼーベック効果)を利用して温度を測定する方式です。工業界で最も広く使われている温度センサです。
熱電対の種類と特徴
- K型(クロメル−アルメル):−200〜1,260℃、±1.5℃ or ±0.4%。最も一般的。安価で汎用性が高い。
- J型(鉄−コンスタンタン):−40〜750℃、±1.5℃ or ±0.4%。K型よりやや低温向け。還元雰囲気に強い。
- T型(銅−コンスタンタン):−270〜400℃、±0.5℃ or ±0.4%。低温域で高精度。−200〜300℃での精度が最も良い。
- E型(クロメル−コンスタンタン):−200〜900℃、±1.0℃ or ±0.4%。起電力が大きく、高感度。
- R型(白金13%ロジウム−白金):0〜1,600℃、±1.0℃ or ±0.1%。高温用。高価だが安定性が高い。
- S型(白金10%ロジウム−白金):0〜1,550℃、±1.0℃ or ±0.1%。標準温度計として使用される。
- B型(白金30%ロジウム−白金6%ロジウム):0〜1,700℃、±0.5℃ or ±0.25%。超高温用。鉄鋼・ガラス業界で使用。
メリット
- 非常に広い温度範囲に対応(−270℃〜1,700℃以上)
- 応答が速い(細い線径なら0.1秒以下)
- 安価で入手しやすい(特にK型)
- 自己発熱がない(測温抵抗体と異なり、通電不要)
- 多点測定が容易(計測器チャンネルを追加するだけ)
デメリット
- 精度は測温抵抗体より劣る(特に300℃以下の中低温域)
- 冷接点補償(基準接点の温度補正)が必要
- 補償導線の線種を間違えると大きな誤差になる
- 経年変化によるドリフトがある(特に高温使用時)
- 長距離配線はノイズの影響を受けやすい
2. 測温抵抗体(RTD:Resistance Temperature Detector)
金属の抵抗値が温度によって変化することを利用した温度センサです。最も一般的なのは白金測温抵抗体(Pt100、Pt1000)です。
- Pt100:0℃の抵抗値100Ω、温度範囲−200〜850℃、精度クラスAで±0.15℃
- Pt1000:0℃の抵抗値1,000Ω、温度範囲−200〜650℃、精度クラスAで±0.15℃
メリット
- 熱電対より高精度
- 安定性が高い、経年変化が少ない
デメリット
- 測定範囲が熱電対より狭い
- 自己発熱がある
- 応答がやや遅い、衝撃に弱い
3. サーミスタ(Thermistor)
半導体の抵抗値が温度によって大きく変化することを利用したセンサ。NTC(Negative Temperature Coefficient)型が一般的です。
- 測定範囲:約−50℃〜150℃(限定的)
- 精度:±0.1℃程度(狭い範囲では非常に高精度)
- 特徴:感度が非常に高いが、非直線性が強く、広い温度範囲では使いにくい
メリット・デメリット
- 高感度・高精度(限られた温度範囲で)、小型・安価
- 温度範囲が狭い、強い非直線性(補正回路必須)、経年劣化がある
4. 放射温度計(非接触式)
物体から放射される赤外線のエネルギー量を測定して温度に換算する方式。物体に触れずに温度を測れるのが最大の利点です。
- 測定範囲:−50℃〜3,000℃(機種による)
- 精度:±1%程度(放射率設定が正確な場合)
- 特徴:非接触、応答が速い、可動部分の温度測定や高温物体の測定に最適
メリット
- 非接触で測定できる(可動部・高電圧部・高温体の測定に最適)
- 応答が非常に速い(ミリ秒オーダー)
- 離れた場所から測定できる
- 表面温度の分布を画像化できる(サーモグラフィ)
デメリット
- 放射率の設定が正確さの鍵:対象物の素材や表面状態によって放射率が異なり、設定を誤ると大きな誤差になる
- 測定対象とセンサの間に障害物(埃・蒸気)があると誤差が生じる
- 表面温度しか測れない(内部温度は測定不可)
- 光沢のある金属面の測定は特に困難
5. はんだごての「電流で温度を測る方式」
はんだごての温度制御では、以下の方式が使われています:
- 熱電対内蔵型:こて先近くにK型熱電対を内蔵。最も正確。
- 抵抗変化検出型:ヒーター自身の抵抗値変化を検出。白金測温抵抗体の応用。
- 電流検出型:ヒーターに流れる電流値から温度を推定。最も安価だが精度は低い。
まとめ:どれを選ぶべきか
- 高温(300℃以上):熱電対(K型が一般的)
- 中低温(300℃以下)で高精度:測温抵抗体(Pt100)
- 狭い範囲で極めて高精度:サーミスタ
- 非接触・高速応答:放射温度計
- はんだごて・簡易制御:熱電対内蔵型または抵抗変化検出型
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出典・参考
- 「熱電対・測温抵抗体の種類と選定方法」, キーエンス
- 「温度センサの基礎と応用」, 日刊工業新聞社
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